2007年6月27日
内閣総理大臣
 安倍 晋三 殿
内閣府副大臣
 林  芳正 殿

J A M
会長 小出 幸男

規制改革会議意見書に関する要請書

 政府の規制改革会議再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォースは5月21日、「脱格差と活力をもたらす労働市場へ〜労働法制の抜本的見直しを〜」と題する意見書を発表した。この意見書によれば、企業の活力を奪い、社会的格差を拡大したり、労働者の地位を脆弱なものとする元凶は、労働者保護の色彩が強い現在の労働法制であり、解雇規制を中心として裁判例の積み重ねで厳しい要件が課されきたことに問題があるとされる。その上で、労働市場における規制を、当事者の意思を最大限尊重する観点から見直し、誰にとっても自由で開かれた市場とすることこそが、格差の是正と労働者の保護を可能とし、同時に企業活動をも活性化することとなると述べている。

 言うまでもなく、労働者保護政策は労働法制のみならず、社会保険や税制を含む総合的な福祉のインフラからなるものである。さらに今日では労働の場から排除されている人々を社会的に包摂するために、積極的雇用労働政策と連動した就労支援・生活保障が喫緊の課題となっているところであるが、意見書にはこうした視点が殆ど欠如している。加えて使用者側の雇用責任について何らの言及もないことは、意見書の著しく偏向した立場を端的に示すものと言える。

 意見書の主張は、EUをはじめとする諸外国の労働市場政策や労働市場から排除された人々を社会的に包摂していくための取り組みから何一つ学ばず、市場原理主義(レーガノミクス、サッチャリズムなど)に執着するばかりで、根拠となるデータや具体的な事例を何一つ示すことができていない。全く独善的かつ一方的な見解と言わざるを得ず、とても学識経験者らによる意見書とは考えられない代物である。こうした意見書の内容が、わが国の労働市場に導入され、労働法規制の緩和を進めるようなことがあれば、国民的批判はもとより、ILOをはじめとした国際的な批判も免れないところである。

 内閣府の一組織である規制改革会議が、労働法制の見直しに関してこのような意見書を公表したことは、重大な問題である。内閣府の経済財政諮問会議は「労働ビックバン」などと表明しているが、今回の意見書のような内容で今後の労働法制見直しが検討されることは絶対にあってはならない。

そこで次のことを要請する。
1.内閣府として規制改革会議の意見書に対する対応を明らかにすること。
2.下記の事項についての見解を明らかにすること。
3.規制改革会議の意見書に責任のある委員を解任すること。


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