橋下・大阪市長の組合つぶし
許すな!

許しがたい不当労働行為

経営者の一部に「悪乗り」の動きも

JAM大阪 書記長 狩谷 道生

 橋下大阪市長は派手で無内容なパフォーマンスによって選挙戦を制し、「民意」を僭称して独善的・強権的な政策を次々と強行しようとしている。彼は施政方針演説(2011年12月28日)で「公務員の組合をのさばらしておくと国が破綻する。組合を是正・改善して行く」と述べ、大阪市労連(大阪交通労組、大阪市職員労組、大阪市従業員労組等で構成)等、大阪市関連の労働組合に対して組合事務所の貸与をはじめ労働組合への便宜供与を一方的に全面否定し、あからさまな組合活動への支配介入、組合組織への弱体化・破壊攻撃を続けている。

 2012年2月9日には、大阪市職員に対して組合活動に関する「アンケート調査」を行い、「処分」で脅しながら業務命令で回答を強要した。
 その内容は

「組合活動に参加したことがあるか」
「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」
「誘った人は誰か」
「誘われた場所と時間帯は」
「組合に加入しているか」
「組合加入のメリットは」
「組合はどのような力があると思うか」
「組合費は適切に使われていると思うか」

等、各職員の組合の組織と活動への帰属意識や参加意欲等の調査に止まらず、職員に対して組合活動への参加を牽制し、組合不信を煽るものとなっている。使用者が正当な組合活動への参加状況を業務命令をもって逐一調査すること自体、労働組合の運営への支配介入であり許しがたい不当労働行為である。

 さらに、労働組合が行う政治活動についても同様の設問で回答を強要している。これらは、憲法で保障された個人の思想信条の自由、政治活動の自由まで踏み込み、侵害するものとなっている。

 大阪市労連は大阪府労働委員会に不当労働行為の救済と実効確保の申立を行った。当然、2月22日、同委員会は「支配介入に当たる」として調査の差し控えを勧告した。これにより市は調査を破棄せざるを得なくなったが、橋下市長は「何ら問題ない」と全く反省していない。これを裏付けるように、同日、市が大量の職員メールを極秘裏に調査していることが発覚した。職場の相互不信を煽る不当な行為である。

 橋下市長は「公の施設内での政治活動はあってはならない」と発言し、公務員の政治活動があたかも違法であるかのようなデマをマスコミを使って流し続け、市民を欺いている。しかし、労働組合が労働条件の向上のために行う政治活動は当然の権利であり、公務員の労働組合であっても同様である。地方公務員法36条で一般職非現業の地方公務員の極一部の活動に制限が加えられているに過ぎない。

 このような橋下市長の公務員の労働組合ばかりか労働組合全体を悪役として世論を煽る行為と、それらに無批判に追随する低レベルのマスコミの宣伝によって、JAM大阪関連の企業の経営者の極一部に、時間中の団体交渉を拒否するなど、「悪のり」する動きも出始めている。

 連合大阪は、3月2日、8,000人の結集で、2012年春季生活闘争総決起集会を開催し、春季生活闘争の諸課題の実現と、橋下市長による労働組合つぶしの即刻停止を求めて市内をデモ行進した。JAM大阪もこれに参加し、力強いシュプレヒコールで市民にアピールした。今後、「職員基本条例」、「教育基本条例」等々、さらにエスカレートする橋下市長の労働組合への攻撃と正面から対峙して行かねばならない。




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団結権に対する重大な侵害

― 許されない大阪市の職員アンケート調査 ―

弁護士 宮 里  邦 雄 (JAM顧問弁護団代表幹事)



業務命令で重大問題を含む調査

 大阪市は、2012年2月9日、市職員に対する組合活動・政治活動等について21項目に及ぶアンケート調査を実施し、2月16日までに回答するよう求めた。この調査は、政治活動にかかわる点も思想・信条の自由、政治活動の自由を犯す重大な問題を含むが、ここでは組合活動に限って述べることにする。

 アンケートは、氏名・職員番号・所属部署を記入して答えることを求めるもので、労働組合にかかわっては、以下7項目がある。


「Q6 あなたは、これまで大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したことがありますか(現在組合に加入していない方も過去の経験でお答え下さい)。 」
「Q16 あなたは、組合に加入していますか。」
「Q17 あなたは、組合に加入することによるメリットをどのように感じています(ました)か。(現在組合に加入していない方でも、過去に加入した経験のある方はお答え下さい。回答するか否かは自由です。)」
「Q18 あなたは、組合にはどのような力があると思いますか。(組合加入の有無を問わず全員お答えください。なお、回答するか否かは自由です。)」
「Q19 あなたは、組合に加入しない(脱退する)ことによる不利益は、どのようなものがあると思いますか(組合加入の有無を問わず全員お答え下さい。回答するか否かは自由です。)」
「Q20 あなたは、これまで組合に待遇等の改善について具体的に相談したことがありますか。(現在組合に加入していない方も過去の経験でお答えください)。」
「Q21 あなたは、自分の納めた組合費がどのように使われているか、ご存じですか(現在組合に加入していない方も過去の経験でお答えください)。」

 アンケート調査の依頼は、総務局長名で、各所属長宛に出され、大阪市長「橋下徹」署名の職員各位宛の「アンケート調査について」という文書が添付される。この市長文書には、「このアンケート調査は任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」と記されている。

職員の団結権へ重大な侵害

 このようなアンケート調査を企業が組合員を含む全従業員にやれば、支配介入の不当労働行為にあたることは明らかである。大阪市は、行政主体であると同時に大阪市職員との関係では集団的労使関係上の使用者である。労使関係の当事者の一方である大阪市が組合員を含む全職員に対し、前述のような項目について業務命令としてアンケート調査すること自体、職員の団結の自由、団結権の中核的内容とされる団結自治(組合自治)に対する違法・不当な干渉・介入であり、職員の団結権に対する重大な侵害である。調査項目から、組合活動に対する抑圧、牽制など反組合的意図もみてとることができる。

 アンケート調査は、労働組合法が適用される現業職員(組合員)に関しては、労組法7条3号で禁止される支配介入の不当労働行為であり、労組法非適用の一般職についても、団結権を侵害するものであることは明白である(一般職地方公務員についても、労組法7条1号と同じような不利益取扱の禁止規定がある ―― 地方公務員法56条)。

 質問には、「回答するか否かは自由です」とするものもあるが、質問すること自体が団結権の侵害であり、市長文書からすれば、回答しないことが問題視されるであろう。

アンケート調査禁止の速やかな命令で団結権侵害の救済を

 大阪市労連および傘下の3組合は、2月13日大阪府労働委員会に、支配介入中止の不当労働行為救済申立、あわせて、ただちに中止しなければ救済の実効が阻害されるとして、労働委員会規則37条2に基づく「審査の実効確保措置の申立」を行い、2月22日、大阪府労委は、会長名で「支配介入に該当するおそれ」があるとして、救済申立事件の判断が出るまでアンケートを中止するよう勧告した。

 申立を受けて大阪市は、救済申立の推移を見守るとして、回答データの開封や集計作業を凍結したが、違法と認めたわけではない。都道府県労働委員会は、団結権侵害の救済を任務とする独立行政委員会である。アンケート調査を禁ずる救済命令を、すみやかに発するべきである。

以 上