JAMものづくりシンポジウムが5月19日東京で開かれ、今年のテーマを「ものづくりはひとづくり」人の活かし方・働く幸せ≠ニして、日本の製造業の強みであり、ものづくりの原点である人材に焦点をあてて討論した。参加者はJAM組合員はじめ企業経営者・教育現場、行政などから120人。
働いてこそ得られるもの
大山会長は、「中小企業の活路〜知的障害者に導かれた企業経営」と題して、これまでの経験や禅寺の住職の言葉から働くことの意味を「人の幸せは、
@愛されることと語り、A〜Cは会社で働いてこそ得られると強調した。
Aほめられること
B人の役に立つこと
C人に必要とされること」
日本理化学工業株式会社は従業員73人の内七割の55人が知的障害を持ち、そのうち重度の知的障害者が26人という企業で、学校などで使うチョークを製造し、国内では三割を超えるシェアを持つ。
会社の創業は昭和12年だが知的障害者を雇用し始めたのは昭和35年。
初めは、仕事のやり方を「指示」していたがうまく行かず、ある時彼女たちが信号のある大きな道路を渡って通ってくることから、文字や数は分からなくても色は区別できると気づき、赤い缶に入った材料は赤い分銅を使って量るというような彼女たちの理解力の範囲内でできるよう工夫・段取ると不安なく仕事ができ、「知的障害者だって『人の役に立ちたい、ほめられたい』という思いはあるので集中してやる」と気付いたという。
障害者雇用は「ベルギー方式」で四方一両得
障害者雇用について大山会長はベルギー方式を提唱する。
企業が仕事を与え、障害者が働き、国が賃金を支払うというもので、「障がい者は少しでも役に立てて働く幸せが叶えられて、かつ月12万円前後の最低賃金が国から支給され、そこからグループホームに月6〜7万円支払えば生活の面倒をみられて、地域社会で自立ができ」る。
企業は賃金を国が払ってくれるので企業の経営体質を強化できる。国は福祉施設で面倒をみれば年間一人500万円かかるところ、最低賃金を150万円とすれば、年間350万円の財政削減ができる。国民にとって、障害者を持つ親は、将来への不安がなくなり、地域で自立できれば地域の活性化にもつながり、「正に四方一両得」と語った。
パネル討論では、ものづくり進化論「働くことへの動機づけ、人材の空洞化を防げ」をテーマにコーディネーターに宮本礼一JAM書記長、パネリストに千代田鋼鉄工業株式会社から荒岡昇常務取締役、日本工業大学工業教育研究所から渡辺勉教授、厚生労働省能力開発局から志村幸久能力開発課長が登壇した。
荒岡氏は、人材教育について、数人あるいは一対一の教育が若者のやる気を出させ、活かすことにつながると語り、渡辺氏は、人材教育には金がかかると指摘し、これを値切るというのは国家が成り立たないと指摘。キーワードは「継続」と「連携」と語り、安定的に継続して優秀な人材が供給されないと地方に企業が進出しない、そのために工業高校とJAMなどの団体が連携していく必要があると強調した。
行政の立場からは志村氏が厚労省の能力開発施策を説明しながら、人材育成は今後日本で成長が見込めるものづくり分野で訓練をしていく。これまで以上に各省庁が
@教育制度
A先導的な中小企業施策
B 労使関係、法制、労働市場制度、技能面の重視
―などで連携が必要だと語った。