JAM・雇用維持型ワークシェアリング推進に関する示達


 第5回中央執行委員会(2月27日)は、次にあげる@からBをふまえ、第5回中央委員会で決定した「JAMのワークシェアリング」について補強することを確認しました。
  1. 第5回中央委員会(1月17・18日)以降の各地方JAMにおける討議
     
  2. 金属労協が「中長期的な観点にたったワークシェアリング(雇用創出型)に対する考え方」「緊急時の雇用対策としてのワークシェアリング(雇用維持型)に対する考え方」として「中間まとめ」を確認することになったこと
     
  3. 政労使の検討会の中間的な結論は3月に出る予定であるが、雇用維持型が先行すると言われていること
 つきましては、「JAM・雇用維持型ワークシェアリング」に基づき、各地方JAM、各単組における取り組みを推進されるよう示達します。
 

<JAM・雇用維持型ワークシェアリング>

 
T.雇用維持型ワークシェアリングの推進
 
  1. 第5回中央委員会で確認した「第一次案」について、名称を「JAM・雇用維持型ワークシェアリング」とします。
     
  2. 雇用維持型は、企業業績の低迷を背景にして、現在雇用されている従業員間の仕事の分かち合いであり、その手法は所定労働時間の短縮、休暇の増加です。雇用創出型は、高失業率の慢性化を背景にして、雇用されている労働者と失業者の仕事の分かち合いであり、その手法は法定労働時間の短縮、多様な働き方です。
 JAMは、次の点から雇用維持型を先行させて取り組みます。
  1. 2001年9月から2002年1月までの調査によると、賃金カット(126単組)、一時休業・教育訓練(102単組)、希望退職(101単組)などが提案され、雇用確保の取り組みは極めて深刻な状況です。雇用を維持する一つの方法として具体化をはかります。
     
  2. モノづくりの職場からさらに雇用が失われることは、モノづくりの基盤が崩壊する可能性があります。モノづくり基盤の再構築のために、雇用の維持を先行させます。
    雇用の削減は、企業にとって必要な人材が流出する可能性があることは、これまでの希望退職などを実施した例からもうかがうことができます。また、従業員のモラルやモチベーションにも影響します。
     
  3. 製造業の雇用者数は、1991年の1,357万人から2000年の1,205万人となり、2001年9月には1,162万人まで減少しています。金属産業の雇用者は、1991年の690万人から2000年の604万人となり、2001年11月には585万人まで減少しています。製造業、金属産業においては、雇用の創出もさることながら、雇用の維持が最優先課題です。
 
U.具体化にあたっての留意点
 
  1. 企業の業績など経営の分析から言って、当面、雇用調整に関する事態に至らないと判断できるところについては、JAM・雇用維持型ワークシェアリングは労使協議・交渉の素材になりません。
    また、企業の状況から言って、企業の整理・清算に至ると判断されるところについては、退職金など労働債権の確保が優先課題となり、JAM・雇用維持型ワークシェアリングは労使協議・交渉の素材になりません。
    企業の業績など経営の分析から言って、雇用調整に関する事態に至ると判断できるところについて、雇用を維持する一つの方法として検討し、他の方法も含め企業の存続と雇用の維持が見通せる場合に具体化します。
     これは雇用維持に向けた方法の一つであり、これで雇用問題は全て解決するという特効薬にはなりません。
     
  2. 経営に関する労使協議・交渉が誠実に行われる健全な労使関係の下で、JAM・雇用維持型ワークシェアリングは労使協議・交渉の素材になります。
     
  3. 新しい試みであり、地方JAMとの相談・連携が重要です。地方JAMと連名の労使協定を追求します。なお、労使協定のモデルを作成します。


JAM・雇用維持型ワークシェアリング(第一次案)


 
 JAMは、雇用維持のために緊急雇用対策指針を策定し取組みを進めてきた。また、雇用調整助成金の活用による一時休業によっても雇用の維持をはかってきた。
 JAM・雇用維持型ワークシェアリングは、労働者が仕事を分かち合うことによって、労働者、企業、政府が雇用を維持する取り組みである。企業は、雇用を維持するとともに、労務費費用の一部を負担し、政府は奨励金(仮称)を負担し、労働者は収入の一部を負担することによって仕事を分かち合うことになる。
 一時休業による雇用の維持もワークシェアリングの一形態である。ただし、受注産業であるJAMの多くの単組では、仕事量の変動に対応できないなど、その効果についての限界も指摘されている。 
 JAMは、日本型ワークシェアリングを目指してJAM型ワークシェアリングについて論議を進め、論点整理を行ってきたが、企業環境の悪化に伴い新たな雇用維持策としてのJAM・雇用維持型ワークシェアリングの取り組みが緊急の課題となっている。したがって、JAMは、一時休業を拡大するワークシェアリングに取り組むとともに、仕事の分かち合いについて1日単位の労働時間を物差しにした新たな取り組みを提起する。
    

 1.1日当たりの労働時間短縮によるワークシェアリング

 この取り組みは、開始条件付の労働協約として整備する。したがって、労働協約の一般的拘束力にともない、雇用関係のあるすべての従業員に対して適用する。

 (1) 協定事項 

〔雇用の維持〕
@ 会社は、ワークシェアリングを実施する期間、希望退職募集、整理解雇を行わない。実施期間については、最長3年間とする。
〔人員と時間の確定〕
A 会社は、必要人員と削減すべき労働時間および仕事量の変動予測について組合に提示し、組合の同意のもとに期間を定めて、この協定を発動する。 
〔期間中の協議〕
B 協定期間中、会社は組合に毎月翌月分の必要人員と削減すべき労働時間および仕事量の変動予測について提示し、組合と協議する。   
〔停止、解除および変更〕
C 業況の改善に伴いこの協定の効力を停止、解除、またはワークシェアリングの内容を変更する必要について、会社、組合のいずれかが必要と考えた場合、停止、解除および変更が必要となる期日の30日前に、相手方に通知し、協議・成立したうえで行う。
〔対象範囲〕
D この協定の対象範囲については、職種、事業ごとに行うことを認め、各単組の実態に合わせ、各単組で工夫するものとする。 
〔基本1.賃金減額に関する考え方〕
E 1日当たりの労働時間を短縮する。時間外割増算定基礎賃金について1時間当たり5%の範囲で日額を減額する。ただし、この減額は他の労働条件(退職金・一時金等)に対しては影響させない。 
(注) 1日8時間の協定労働時間を7時間にして、その1時間の賃金について60%を企業が負担を し、40%を労働者が負担をすると、日額の減額率は、(1時間÷8時間)×(40%÷100%)×100%=5%となる。60%は、労基法の休業手当60%の考え方の延長による。
(注)1時間短縮で5%減額、2時間短縮で10%の日額減額との考え方である。
1/8Hは、日額の12.5%に相当する。この1時間分の60%を企業が負担し、40%を労働者が負担する考え方の上に立っている。
60:40は、労働基準法の休業手当の考え方の延長で“生活の激変緩和”への措置である。残業が減り、収入全体が減る中で、生活を維持していくためには、生活への激変緩和の考え方を守ることが必要である。           
※労働基準法(第26条)では、休業期間中の賃金保障を、平均賃金の60%以上と定めている。

F 法定労働時間を超える時間外労働を行わない。法定労働時間内の時間外労働(この協定における労働日における協定労働時間以外の労働時間)については、時間外割増賃率を適用しない。
(注) 1日8時間の協定労働時間を7時間とした場合、協定労働時間の7時間を超えて法定労働時間の8時間まで労働したとしても、時間外割増率を適用しない考え方である。なお、当然のことながら5%の減額なしの8時間分の日額となる。   
〔運営1.変形労働時間の活用〕
G 1日の労働時間を短縮した後、変形労働時間制を活用する。
(注) 1年以内の一定の変形期間を平均して1週間の労働時間が40時間以内で所定労時間を設定する1年単位の変形労働時間制では、限度時間を1日10時間、1週52時間に設定することができる。 
 〔運営2.シフト制の活用〕
H 作業効率を高め、仕事量の変化に対応するために、1日、または複数日単位のシフ ト制を活用する。

 

(2) 政策・制度要求

企業の負担分に対し、国の「ワークシェアリング奨励金」(仮称)を求める。



2.一時休業制度によるワークシェアリング

  一時休業制度をさらに活用して、雇用の維持をはかる。