10月9日にノーベル化学賞の受賞者が発表され、海外の2教授とともに京都・島津製作所の田中耕一さんの受賞が決まった。日本中の驚きと感動と同時に、JAMは仲間である島津労組の組合員の快挙を、喜びと誇りをもって迎えた。

 田中さんは43歳、日本人では故湯川秀樹博士の42歳に次ぐ2番目の若さである。しかも、教授、博士が圧倒的に多いノーベル賞史上、民間企業に所属している数少ない受賞者だ。


 田中さんら3氏の授賞理由は、「生体高分子の同定と構造解析のための手法の開発」という。田中さんは1987年、28歳で「ソフトレーザー脱着法」を開発、その功績を認められた。


 3氏の開発により、細胞の中でタンパク質がどう機能するかなどが具体的に分かり、新薬の開発は画期的な進歩を遂げた。また、食品検査や乳がん、前立腺がんの早期診断など、幅広い分野で応用が可能になった。


【左】「組合員の誇りです」と上坂清次島津労組組合長
【右】子供たちに「完成品のみを求めることなく、自分で作る面白さ、喜びを知って欲しい」と田中耕一さん

受賞の恩返しに、産・官・学の橋渡しを果たしたい

 受賞の決定後、休む暇もなく対外活動に追われている。「すでに40件もの講演依頼があり、とても応じきれない」と嬉しい悲鳴をあげるのは広報担当の谷垣哲也課長。そんな中、JAMの取材に快く応じてくれた。

 田中さんは、「これまでの研究を今後も続けていく。合わせて、受賞をバックアップしてくれた諸機関の恩に報いる意味で、他の研究者と産・学・官との橋渡しの役を果たしたい」と抱負を述べた。

 また、多くの若手研究者に対しては、「自分が伝承する力は小さいが、各分野でがんばっている先輩の姿、モノ作りの大切さとやり甲斐を通して、大きく育って欲しい」と、謙虚な表現ながら期待を寄せた。さらに、将来を担う子供たちにはプラモデルを例にあげ、「完成品のみを求めることなく、自分で作る面白さ、喜びを知って欲しい」と願いを込めた

 田中さんの「並外れた集中力」は早くから評価され、常識にとらわれず研究してきた姿勢と、「科学技術で社会に貢献する」という企業風土の中で、この快挙が実現したといえよう。

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