労働時間規制の新しい適用除外制度(日本版ホワイトカラー・イグゼンプション制度)の導入が検討されている。一定条件のホワイトカラー労働者が対象となる。

 これまでも経営者団体などは、米国のホワイトカラー・イグゼンプション制度を真似て、労働時間規制の適用除外制度の導入を求めていた。厚生労働省は、2007年の通常国会での法改定に向け、労働政策審議会・労働条件分科会において、この制度導入を含む労働時間法制の見直しの検討を進めている。厚生労働省の案では、「自律的労働にふさわしい制度」と称して、一定条件の労働者について労働時間規制の適用を除外し、時間外労働の割増賃金の支払いをしないとしている。

 しかし、日本の労働時間の現状をみると、労働時間の二極化が進み、週に60時間を超えて労働する人が増加している。特に20〜30歳代の若い人たちに週60時間を超えるものが多いという実態がある。
 時間外労働の増大と50%を割り込む年次有給休暇の取得率低下により、長時間労働が蔓延し、メンタルヘルス不調者を増大させ、過労死・過労自殺をまねいている。加えて、仕事と家庭の両立を困難にさせ、深刻な少子化社会の原因の一つであるとも指摘されている。まさに看過できない社会問題である。

 “自由な働き方”に対する労働時間制度は、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制、フレックスタイム制などによって、すでに整っている。では、何のために新たな自律的労働時間制度が必要なのであろうか。結局は、コスト削減策に他ならないのではないか。
 労働時間規制の適用除外となる人たちが、今までの管理職層に加えて、その下の従業員層にまで大きく拡大することになる。ぎりぎりの納期で仕事に追われながら、一日に16時間働こうが20時間働こうが何の規制も受けず、残業手当もない人たち。そういう人の増大が強く懸念される。「時間に拘束されない自由な働き方」という美名のもとに、行き過ぎた長時間労働が温存され、隠蔽されることになる。

 90年代以降、日本社会は、市場経済におけるコスト論に、圧倒され、従属させられてきた。しかし、今ここで必要なのは、「ワーク・ライフ・バランス」つまり仕事と生活の調和である。「ゆとり」が失われた社会に、未来は期待できない。社会全体で、ワーク・ライフ・バランスを考え、人間らしい生活を取り戻そうではないか。そのために、労働時間のあり方を見直し、行き過ぎた長時間労働を是正しなければならない。

 私たちは、自律的労働時間制度(日本版ホワイトカラー・イグゼンプション制度)の導入に断固として反対する。

 以上、決議する。

2006年8月31日  J A M 第8回定期大会