政策ニュース

2001年9月28日 第2002−4号

《発    行》  J  A  M

《発行責任者》 大山  勝也

《編     集》 社会政策局

TEL:03-3451-2586

mail:syakai@jam-union.or.jp

  
10月1日から改正雇用対策法等施行
 

円滑な再就職の促進

   

 経済・産業構造が大きく転換する中で、労働移動が増加し、失業率が高止まりすることが懸念されています。

 円滑な再就職を促進し、職業生活の全期間を通じて労働者の職業の安定を図っていくために、「円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部改正法」が10月1日から施行されます。

   

改正法の概要

   

1.再就職援助計画制度

 事業主は、多数の労働者が離職を余儀なくされることが見込まれる事業規模の縮小等を行う時には、再就職援助計画を作成し、公共職業安定所長の承認を得なければならないとされています。

(1)再就職援助計画の作成

 事業規模の縮小など(事業規模や事業活動の縮小・事業の転換もしくは廃止をいう)に伴い常時雇用する労働者について、1ヵ月に30人以上の離職者を生ずることとなる場合に作成する。30人未満の場合も、任意で作成することができる。

(2)再就職援助計画の作成・提出時期

 事業規模の縮小などの実施に伴う、最初の離職者が生じる1ヵ月前までに作成し、計画作成後遅滞なく、公共職業安定所長に提出して、認定を受ける。

(3)再就職援助計画の記載内容

@事業の現状

A再就職援助計画作成に至る経緯

B計画対象労働者に関する事項

C再就職援助のための措置

D労働組合の意見

(4)再就職援助計画の実施

 認定を受けた事業主は、再就職援助計画に沿って援助を行う。

(5)国の助成・援助

 認定を受けた事業主に対して行う。

1)公共職業安定所

 必要に応じて求人情報の提供や出張相談などの援助を行う。 

2)雇用・職業能力開発機構

 労働移動支援助成金の支給

<労働支援移動助成金>

@求職活動支援給付金(送り出し事業主へ)

 事業主が計画対象労働者に求職活動などのための休暇を付与し、通常の賃金額以上の額を支払った場合、休暇1日あたり4千円を支給する。教育訓練費を全額負担した場合は1日あたり千円を加算。

 ただし、労働組合の同意が無い場合は不支給

A定着講習支援給付金(受け入れ事業主へ)

 計画対象労働者を、失業を経ずに受け入れた事業主が、定着のための一定の講習を行った場合、1人あたり10万円支給する。

B労働移動支援体制整備奨励金(事業主団体へ)

 再就職相談室の設置などの事業を実施する中小企業事業主団体に、費用の二分の一(限度額100万円)を支給する。

  

2.年齢制限緩和の努力義務

 厳しい雇用環境におかれている中高年齢者をはじめ、労働者の再就職を促進するために、事業主は労働者の募集・採用にあたって、労働者の年齢を理由として募集・採用の対象から排除しないように努力しなければなりません。

<事業主が適切に対処するための指針>

(1)事業主が講ずべき基本原則

@労働者の年齢を理由として排除しないよう努めること。

A募集にあたり職務の内容、必要とされる能力などをできる限りあきらかにするよう努めること。

(2)年齢制限が認められる場合(限定列挙)

 年齢制限が認められる場合については、事業主が求職者や職業紹介機関に説明をすることが必要。

@新規学卒者を募集・採用する場合

A技能・ノウハウなどの継承の観点から労働者の年齢構成を維持・回復させる場合

B定年年齢との関係から雇用期間が短期に限定される場合

C既に働いている他の労働者の賃金額に変更を生じさせることになる就業規則の変更を要する場合

D商品やサービスの特性により顧客などとの関係から業務を円滑に遂行する要請がある場合

E芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合

F労働災害防止などの観点から特に考慮する必要がある場合

G体力、視力など加齢に伴い機能が低下するものが、採用後の勤務時間を通じて一定水準以上であることが不可欠な業務の場合

H行政の施策を踏まえて中高年齢者の募集・採用を行う場合

I労働基準法などの法令の規定により年齢制限が設けられている場合  

(3)「年齢制限が認められる場合」に該当しない不合理な理由による年齢制限(代表的な例)

@高齢者は柔軟性・協調性・適応能力に欠ける

A高齢者は意欲・気力に欠ける

B高齢者は使いにくい

C高齢者は定着率が低い

D上司が年下である

E年輩者には補助的な仕事が頼みにくい

制度の改定

3.雇用調整助成金制度の改定

 業種にかかわらず、急激な事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を支援する制度に改定されました。

(下の雇用調整助成金制度新旧対照表をご参照ください)

   

労働組合の役割

  

 再就職援助計画制度では、労働組合の意見が重要なポイントになります。労働組合が「この計画を適当と認め、同意する」という同意がない場合には、労働移動支援助成金のひとつである求職活動支援給付金が支給されません。

 雇用調整が危惧される単組は、こうした新しい助成制度を積極的に活用するよう事業主に対する働きかけを行ってください。

 JAMでは労働組合の対応や改正法の詳細についての手引を現在作成中です。緊急なお問い合わせは、JAM本部社会政策局・市川までお願いします。


雇用調整助成金制度の新旧対照表
【雇用調整助成金制度の新旧対照表】
  旧 制 度 新 制 度
対象事業主

(指定業種の指定基準生産量5%減、雇用量5%減の業種)

@指定業種で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主
(最近3ヵ月の対前同期年比で生産量減雇用量不増)

@次のいずれかに該当する事業主

・最近6ヵ月の対前年同期比で生産量10%減、雇用量不増の事業主

・中小企業経営革新支援法の特定業種のうち、経営基盤強化計画の承認を受けた組合の構成員で事業活動の縮小を余儀なくされた中小企業事業主
(最近3ヵ月の対前同期年比で生産量減雇用量不増)

A特定雇用機会増大促進地域または緊急雇用安定地域内や大型倒産等事業主の下請・取引事業主で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主
(最近3ヵ月の対前同期年比で生産量減 雇用量不増)

A雇用維持等地域内や大型倒産等事業主の下請・取引事業主で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主
(最近3ヵ月の対前同期年比で生産量減雇用量不増)

支給要件

・指定期間内に行った休業、教育訓練
(2年間で200日まで)

・指定期間内の開始した出向
(助成は1年間)

・利用可能期間内に行った休業等で教育訓練を行う場合を含む
(1年間で100日まで)

・利用可能期間内に開始し、1年以内に復帰した出向

※利用可能期間

・@の事業主が定める日から1年またはAの指定期間

・@の事業主に係わる利用可能期間は間隔を1年以上あける必要がある

助成内容

・休  業
休業手当相当額の1/2(中小企業は2/3)

・教育訓練
受講賃金相当額の1/2(中小企業は2/3)
+訓練費(3000円/人日)

・休業等
休業手当相当額の1/2(中小企業は2/3)
教育訓練を行う場合:+訓練費1200円/人日

・出向
出向元で負担した賃金の1/2
         (中小企業は2/3)

・出向
出向元で負担した賃金の1/2)
          (中小企業は2/3)

3.雇用調整助成金制度の改定へ