政策ニュース

2001年9月26日 第20202−2号

《発    行》  J  A  M

《発行責任者》 大山  勝也

《編     集》 社会政策局

TEL:03-3451-2586

mail:syakai@jam-union.or.jp

  
医療費本人負担3割へ?! もう財政のつじつま合わせは許さない!
厚生労働省「医療制度改革試案」の撤回をただちに求める!!
  

厚生労働省が
医療制度改革試案を公表

 9月25日、厚生労働省は2002年度「医療制度改革試案」を公表しました。「試案」では、医療と医療保険制度の将来の明確な姿が全く示されておらず、国民・患者への大幅な負担増と給付削減策にすぎないものです。
※内容は下の表をご参照下さい

また、政府・与党の公約破り

 私たち労働者の本人負担は、1983年までは初診料のみでしたが、1984年に1割になり、1997年には政府・与党が、抜本改革を2000年度に実施するという約束で、2割になりました。今回の改革は、診療報酬体系・薬価基準制度・老人保健制度・医療供給体制を抜本的に改革する具体策が示されなければなりません。しかし、「試案」はこれらの抜本改革を示さず、財政のつじつま合わせを行うために、安易に保険料と患者負担を引き上げようとしています。

こんな問題点が・・

 連合では事務局長談話で試案の問題点を次のように指摘しました。

@中長期的に維持可能な将来の医療保険制度の姿が展望されていない。

A医療費膨張の元凶である出来高払いの診療報酬体系を改革せず、医療費の不正請求や、重複受診などの医療費の無駄・非効率を放置したまま、国民に大幅な負担増を求めている。

B医療供給体制の有効・効率化や医療情報の公開などの改革案が示されていない。

C老人保健制度にかわる新たな高齢者医療制度の案が提示されていない上、老健拠出金を逆に増やそうとしている。

D医療費全体の伸びの抑制策を示さず、老人医療費の抑制に限定している。

 今後、医療制度は2002年度改革をめざし「試案」を基に社会保障制度審議会・中央社会保険医療協議会などで協議され、年末までに最終案をまとめ、来年1月の通常国会に関連法案が提出される予定です。


安心と信頼の医療制度を!!

 日本の医療制度は医療を受ける機会の平等が確保されているのが特徴で、世界でも評価の高い国民皆保険制度です。「財政危機でお金がないから保険料を上げ、患者負担を増やせばいい」という小手先だけの改革では、国民皆保険制度の将来は真っ暗です。
 だれでもどこでも使えるこの医療保険制度を今後も安心して利用でき、質の高い医療を受けることができるよう、JAMも連合と連携して厚生労働省「試案」の撤回を求め、連合とともに大衆行動を展開していきます。


医療制度改革試案

【医療制度改革試案の主な内容】

  

<患者の自己負担>

  現行制度 医療制度改革試案

窓口負担

・国保加入者=外来・入院とも3割

・健保加入者本人=外来・入院とも2割

・健保扶養家族=外来3割、入院2割

健保加入者本人・家族=外来・入院とも3割
3歳未満の乳幼児は2割へ引き下げ(少子高齢化対策の一環) 

高額療養費

<上限の基準額>

低所得者=3万5,400円

一   般=6万3,600円

月収56万円以上=12万1,800円

(2001年1月より現行制度を実施)

<上限の基準額>

一  般=7万2,000円程度

月収56万円以上=14万円程度

薬剤費

外来の薬剤費別途負担あり 外来の薬剤費別途負担を廃止


<保険料>

現行制度 医療制度改革試案

月収をベースに計算し保険料を徴収

<一時金>=政府管掌健保は1%を徴収健康保険組合は1%以内で徴収できるが、徴収していない組合が多い

@総報酬制を導入

2003年度から一時金を含めた年収を基準に保険料を徴収する。

A政府管掌健保の保険料率を引き上げる


<高齢者医療制度>

  現行制度 医療制度改革試案

対象
年齢

70歳以上の人と65歳以上で寝たきりの人

2002年度から段階的に75歳以上に引き上げる

2002年10月〜71歳以上

2003年10月〜72歳以上

2004年10月〜73歳以上

2005年10月〜74歳以上

2006年10月〜75歳以上

寝たきりの人は現行と同じ65歳以上

窓口負担
 

<外来>

病院=1割(月額上限3,000円〜5,000円)

診療所=1割(月額上限3,000円)か1回800円(月5回目以降は無料)の定額制

(2001年1月より現行制度を実施)

<外来>の現行制度を廃止

75歳以上=1割、高額所得者は2割

70〜74歳=2割(高齢者医療制度の対象からはずれる人)

65歳以上の寝たきりの人は引き続き1割

その他

 

@老人医療費の伸びを管理する制度を導入

A老人保健拠出金の算定方法の見直し